• 後継者問題

コーヒー生産者のたまごを育てる(えがおプロジェクト第4弾)

コーヒー生産者のたまごを育てる「COFFEE CLUB」への支援

今のこどもたち世代が大人になった時、
私たちが今飲んでいる美味しいコーヒーが飲めなくなっているかもしれない

えがおforザプラネットの活動を私たちが考える上で大切にしている大きな課題のひとつです。
この課題は
1.気候変動に関わる問題
2.経済成長と産業構造の変化
3.日本の人口減少と経済成長
この三つの面から考えることができます。

このジャーナルでは2の「経済成長と産業構造の変化」という面から、コーヒーが抱える問題とその課題を解決するための取り組みを紹介したいと思います。

コーヒーの生産国「タンザニア」に目を向ける

コーヒーのサプライチェーンの根幹はコーヒー栽培であり、農業です。コーヒー生産国も産業構造が変化し、一次産業から二次産業/三次産業への労働人口の流出が起こっています。では、なぜ農業従事者が増えず、減っていくのでしょうか?理由を考えてみましょう。

1. 労働力の都市部への流出

経済が発展すると、二次産業や三次産業が発展し、都市部に雇用機会が増加します。労働者はより高い賃金や安定した仕事を求めて、多くの若者が都市部へと流出します。これにより農業従事者を含む一次産業の労働力が減少します。

2.不安定性

農業は気候変動や自然災害の影響を受けやすく、干ばつや洪水、病害虫の被害などで不作になると、生活基盤が失われるリスクが大きいです。また、近年の高騰するコスト(肥料や輸送、人件費)も相まって、安定的な収入を得やすい二次産業や三次産業を求めることになります。

3. 教育水準の向上

教育が普及し、教育水準が向上すると、若者は農業以外の専門的な仕事に就く選択肢を持つようになります。これにより、親の代から農業を継ぐという伝統的な考え方が薄れ、一次産業への従事が減少します。

特にコーヒーは国際価格により、安定した収入を得ることが困難な点を忘れてはいけません。

私たちコーヒーに関わる人々は、これから先もコーヒーの産業が持続可能であるために、何ができるでしょうか。今回のプロジェクト【タンザニア コーヒークラブ】は、タンザニアのコーヒー産業が抱える問題を少しでも解決させるために、消費国の私たちやコーヒー自家焙煎店の方々と共に進めるプロジェクトです。

えがおプロジェクト 第4弾【タンザニア コーヒークラブ】

タンザニアは約6万トン以上のコーヒーを生産しており、世界で19番目に大きなコーヒー生産国です(※1)。コーヒー生豆の輸出額は2009年から2023年までの間、対日本が1位であり、特に日本では「キリマンジャロ」という名前で親しまれています(※2)。そんなタンザニアのコーヒー生産において、どのような問題を抱えているのでしょうか。ここまで読み進めた方はすでにお分かりのことと思います。
私たちはタンザニアのコーヒー生産における問題解決のためのこのプロジェクトを、現地輸出業者からの提案を受け実施することにいたしました。

ムセンセ高校「コーヒークラブ」への支援

ムセンセ セカンダリースクール(以下、ムセンセ高校と呼びます。ソングウェ地域ムボジ地区イサンサ区にある政府運営の学校。)の中に「コーヒークラブ」があります。このコーヒークラブへの支援がこのプロジェクトの骨子です。

プロジェクトの目的:
  • 卒業後の雇用選択肢を提供する
  • コーヒー生産者における高齢者と若者の年齢ギャップを減らす
  • コーヒー生産を増加させる

私たちはコーヒー栽培の指導をすることが出来ないので、タンザニア現地輸出業者を介して農業指導員が派遣され、彼らの力を借りて以下のプロジェクトの実施が行われます。

コーヒープロジェクトの実施内容:
  • コーヒー苗木の育苗管理
  • コーヒー農場の準備と植付け
  • 肥料と農薬の施用
  • コーヒーの栽培実践
  • コーヒーの収穫と加工
  • コーヒーの品質、販売、輸出
  • その他のカリキュラム:会計、衛生、スポーツ、研修旅行

ムセンセ高校にはプロジェクトに必要な苗木/農薬/肥料/殺虫剤が提供されます。生徒と教師はコーヒー栽培の全過程について訓練を受け、3ヶ月ごとに生徒の区画を指導員が訪問し進捗を確認、個別指導を行います。学校にはコーヒーの木を植えるための土地・労働力・人員(生徒)を集めてもらい、参加する生徒を登録し私たちに共有してもらいます。学校農場でのすべての活動は、通常の授業時間後に行われますが、あくまでこのプロジェクトは学校のカリキュラムの一部として行われることになります。
学校の農場は実践的な訓練を行うデモンストレーション農場としての立ち位置です。ですので、生徒は実践的な訓練を受け、訓練で学んだことを自宅の農園区画で更に実践することが目的達成のための一つ目のゴールです。また、指導員は生徒の区画を訪問して進捗を確認し、現場でさらなる訓練を提供することも行います。

私たちの支援方法:

当社から親会社である石光商事を経由、現地輸出業者を通じ、ムセンセ高校へ3,333米ドルを寄付いたしました。そのうちの半分を当社が負担し、半分を当社取引先の皆さんが「えがおプロジェクト対象商品 [シランガ ウォッシングステーション]」をご購入いただいた売上金の一部を充当させていただきます。

プロジェクトの進捗状況:

ムセンセ高校のコーヒークラブの農業指導は、2022年10月から開始されています。現地からの報告の一部を抜粋し記載いたします。

2022年10月
  • 畑の開墾と測量の実施、有機肥料の施肥、コーヒーの植付け
  • 新しいコーヒークラブのメンバーの募集を開始し、30名のクラブメンバー(女子18名、男子12名)がプロジェクトに参加
  • ムセンセ高校の農場に合計2,000本のコーヒーノキを植え、30名のクラブメンバーそれぞれに自宅の区画に植えるために50本ずつ配布
2023年
  • 土壌の栄養と改良のため、年3回(1月/3月/12月)施肥を実施
  • クラブメンバーへ、自宅の区画のコーヒーノキに施肥するための肥料を配布
  • 気候変動の課題に対応するため、学校農場では窒素供給の増加と土壌浸食防止のために豆類を間作
    これらの豆は後に生徒と教師が学校で昼食時に消費します。
  • コーヒーのシェードツリーとしてバナナの木を植樹
    バナナは収穫後に販売して学校の収入となります。
  • クラブメンバーの自宅の区画に植えるためのバナナの木を配布
  • 5月の雨季終了後、日陰作り(小さな木を日陰用の草で覆う)土壌水分を保持、土壌水分を保持、土壌水分を保持
2024年
  • 第1四半期 施肥・間作・除草
  • 第2・第3四半期 指導員による生徒の栽培区画の視察
  • 2024年5月時点で、24名(女子16名、男子8名)のクラブメンバーがコーヒー栽培を継続しており、6名がプロジェクトから離脱しました。
  • 第4四半期 新規農場の開設/拡大
  • 9月 新しいクラブメンバーがプロジェクトに加入
  • 10月 有機肥料を入れる農場準備開始
    プロジェクトを継続しているメンバーの一部も区画を拡大し始めました。学校も700の新しい穴を準備して農場を拡大しました。
  • 肥料の配布と施肥
  • 12月 コーヒーノキの配布と植付
    合計1,647本のコーヒーノキが配布され植えられました。学校農場に718本、生徒の区画に929本(卒業生を含む以前のメンバーに353本、新規加入の生徒に560本)が植えられました。
  • 12月末時点でクラブメンバーは35名(女子19名、男子16名)
    2022年から2024年までに植えられたコーヒーノキの本数
    学校農場:2,718本
    生徒の区画:2,429本
    総本数:5,147本
視察報告:
  • 2025年6月 当社社員がムセンセ高校を訪問
    2022年に植え付けてから今年が初めて収穫が可能となる年とのこと。収穫されたコーヒーチェリーは4kmほど離れた精選工場へ運ばれ、現金化される。来年以降、灌漑設備も導入される予定。
  • クラブメンバーの自宅農場も訪問

 

これからの私たちの活動:

私たちはまだ、このプロジェクトに関わり始めたばかりです。
コーヒークラブで栽培を始めたコーヒーノキも、2025年にようやく収穫が始まったばかりです。今はまだ小さなコーヒーノキをどのように管理し成長させ、更に収穫量を増やしていくのかをクラブメンバーはこれから学んでいくことになります。さらには収穫後のコーヒーチェリーがどのように精選され世界中へ輸出されていくのかも知ることになります。

私たちは今、ムセンセ高校に対し資金的な援助を行うことでしか支援を行うことができませんが、それによってコーヒー栽培を学んだメンバーが価値ある農業であると認識し、持続的なコーヒーの栽培に従事してくれることを願うばかりです。

私たちはまず、当社の取引先であるコーヒー自家焙煎店の皆様にこのプロジェクトを知ってもらい、
「えがおプロジェクト対象商品 [シランガ ウォッシングステーション]」
のコーヒー生豆の購入により支援の輪に加わっていただくところからスタートいたします。

そして継続的な支援となるよう、ムセンセ高校とコーヒークラブへの関りを継続していきます。

 

※1 Food and Agriculture Organization
※2 JETRO